WordPress俯瞰講座

ブロック/FSEは「編集画面」ではない ― WordPress設計思想の転換を俯瞰する

ブロック/FSEは「編集画面」ではない ― WordPress設計思想の転換を俯瞰する

結論

ブロックエディターと FSE(フルサイト編集)は「Classic より使いにくい編集画面」ではありません。サイト全体をブロックという共通単位で構成し、見た目を theme.json で一元管理するという設計思想の転換です。本文だけでなくヘッダー・フッター・テンプレートまでブロックで組み、色・余白・タイポグラフィを一箇所で握る——これが WordPress の「本流」です。Classic や独自ビルダーは実用性こそ高いものの、この本流からは少しずつ乖離していきます。編集画面の好き嫌いで判断していたものは、実はどの設計思想に乗るかという選択だった、というのが本稿の核心です。

この記事はこんな人へ

  • ブロックが苦手で、つい Classic エディターに戻している中級制作者
  • ページビルダー(Elementor 等)やカスタム CSS で隅々まで作り込んでいる人
  • 「ブロックは触りにくい」という体感を、設計思想の話として捉え直したい人
  • 数年単位で運用するサイトの保守性・移植性に不安がある人
  • 標準(ブロック/FSE)に乗るべきか、今のやり方を続けるべきか迷っている人

よくある認識(近視眼モデル)

  • ブロックエディターは「Classic の置き換え版の編集 UI」にすぎない
  • FSE は「上級者向けの難しい機能」で、自分には関係ない
  • 見た目はテーマの CSS かビルダーで作るもの。theme.json は触らなくていい
  • ビルダーの独自ブロックは便利だから、全ページそれで作れば問題ない
  • カスタム CSS を足せば、ブロックの制約はいくらでも回避できる

これらはどれも「編集画面の使い勝手」というレイヤーで物事を見ています。間違いではありませんが、視座が一段低い。本来は「サイト全体をどの単位で組み、見た目をどこで管理するか」という構造の話なのです。

なぜ天井にぶつかるか

ブロック/FSE には見た目を決める階層が複数あります。ざっくり言うと、theme.json(テーマが定義する初期値・全体の土台)、グローバルスタイル(外観 > エディター内の「スタイル」でサイト全体に上書き)、ブロック個別設定(個々のブロックでの上書き)の三層です。優先順位は 個別 > グローバル > theme.json の方向に強くなります。

ここで「後付け知識」で扱うと迷子になります。全体の見出し色を変えたいのに、過去に各見出しブロックで個別に色を指定していると、グローバルスタイルを変えても個別設定が勝って反映されない。逆に「theme.json をいじったのに変わらない」のは、グローバルスタイルで上書き済みだから、というケースもよくあります。

さらに厄介なのが、ここに手書きの !important 付きカスタム CSS を被せた状態です。三層のさらに外側から強制的に勝ちにいくため、「どこを直せば何が変わるか」の見通しが完全に崩れます。場当たりの上書きを積むほど、後から来た人(未来の自分を含む)が解読できない特定度の沼ができあがる。これが「ブロックは思い通りにならない」という体感の正体であり、天井です。天井は機能の限界ではなく、階層を逆走している運用が作っています。

旧来モデルからブロック・FSEモデルへの転換
図の読み方:FSEは「編集画面の置き換え」ではなく、見た目の管理場所そのものの移動です。

俯瞰で見る:何が標準になったか

観点旧来(Classic/独自ビルダー)ブロック/FSE(本流)
見た目の管理テーマCSS・ビルダー設定・個別CSSに分散theme.json+グローバルスタイルに一元化
構成単位ショートコード・独自要素・PHPテンプレートコアブロック(共通のデータ構造)
編集場所エディター(本文のみ)/ビルダー画面外観 > エディター(サイトエディター)でヘッダー〜フッターまで
移植性テーマ・ビルダー依存で持ち出しにくいブロックは標準仕様なのでテーマを越えて生き残りやすい

注目すべきは「編集場所」です。Classic では本文しか触れず、ヘッダーやフッターはテーマの PHP の領域でした。FSE では 外観 > エディター(サイトエディター) からサイトの骨格そのものをブロックで編集します。編集の射程が「本文」から「サイト全体」へ広がった——これが FSE の本質です。

WordPress 7.0 で広がったブロックの守備範囲

2026年5月リリースの WordPress 7.0 は、この方向をさらに推し進めました。

  • 新コアブロック「Breadcrumbs(パンくず)」が追加。プラグインなしでサイト構造から自動生成される。
  • 新コアブロック「Icon(アイコン)」が追加。標準アイコンライブラリを内蔵し、SVGを配置・リサイズ・配色できる。
  • Grid ブロックのレスポンシブ化。列数が「上限」として扱われ、画面幅に応じて自動で段数が減る。
  • Gallery ブロックのライトボックス対応。「クリックで拡大」時に前後送りやキーボード操作、読み上げに対応。

これまで「プラグインやビルダーで補う」のが当たり前だったパンくず・アイコン・レスポンシブグリッド・ライトボックスが、コア標準で賄えるようになった。本流の守備範囲は着実に広がっています(出典:WordPress News)。

Classicは本文のみ編集、FSEはヘッダーからフッターまでサイト全体をブロックで編集
図の読み方:FSEでは編集の射程が本文からサイト全体へ広がります。

具体シナリオ① Classic 固執で「一元管理」を逃しCSS地獄に

何が起きた:ある制作者は Classic エディターで全記事を書き続け、見た目はテーマの追加 CSS で調整していました。100ページを超えた頃、「本文の基準色・リンク色・見出し下の余白を全体的に変えたい」という依頼が来ます。ところが色も余白も各所のカスタム CSS にバラバラに直書きされ、!important も散在。一括変更どころか、どこを直すと何が壊れるか追えず、ページを一つずつ目視で修正する羽目になりました。

なぜ:見た目の管理場所が「分散」していたからです。theme.json とグローバルスタイルを使っていれば、全体の色・余白・タイポは定義一箇所を変えるだけで全ページに波及したはずでした。

俯瞰の教訓:編集 UI の好みで Classic を選ぶのは自由ですが、その選択は同時に「theme.json による一元管理という最大の恩恵を捨てる」選択でもある、と自覚することが重要です。

具体シナリオ② ビルダー独自ブロックで全ページ作り、テーマ移行で移植不能に

何が起きた:別の制作者は高機能なページビルダーの独自ウィジェットでサイト全体を構築。数年後、テーマを入れ替えようとしたところ、各ページの中身がビルダー独自の形式で保存されていたため、テーマやビルダーを外すとレイアウトが丸ごと崩壊。本文を新環境へ持ち出せず、作り直しに近い工数がかかりました。

なぜ:コンテンツが「標準のブロック(共通のデータ構造)」ではなく「特定ツール依存の形式」で固定されていたからです。

俯瞰の教訓:標準コアブロックで書かれた本文は、テーマやビルダーを越えても素のまま生き残ります。「今の便利さ」と「将来の持ち出しやすさ」はトレードオフであり、長期運用ほど後者の比重が上がります。

スタイルの優先順位:ブロック個別設定>グローバルスタイル>theme.json、外側に!important
図の読み方:下の土台(theme.json)を上の層が上書きします。!importantは三層の外から強制的に勝つため見通しが崩れます。

では、どう向き合うか(3つの判断軸)

  1. 標準ブロックで書けているか — 段落・見出し・グループ・カラム・Grid といったコアブロックで実現できないか。独自ブロックやショートコードに逃げる前に、まず標準で組めないかを問う。
  2. theme.json で管理できているか — 色・余白・フォントを各ブロックに直書きしていないか。全体に効く値は theme.json とグローバルスタイルへ寄せ、個別上書きと !important は最後の手段に。
  3. 5年後にテーマを変えても本文が生き残るか — 今書いているコンテンツは、テーマやビルダーを外しても素のブロックとして残るか。残らないなら、それは「資産」ではなく「特定ツールへの預け金」だと考える。

この3つは「ブロックに全面移行せよ」という話ではありません。標準=ブロック/FSE を基準点に置いたうえで、あえて外れる判断なのか、知らずに外れているのかでは、数年後の保守コストがまるで違います。

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まとめ

ブロック/FSE への抵抗感は、多くの場合「編集画面の好き嫌い」として語られます。しかし本質は、サイト全体をブロックで構成し、見た目を theme.json で一元管理するという設計思想に乗るかどうかです。Classic に固執すれば一元管理の恩恵を、ビルダー独自形式に頼れば移植性を、それぞれ静かに失います。「標準ブロックで書けているか/theme.json で管理できているか/5年後に本文が生き残るか」——この3軸で、いま自分がどの思想に乗っているかを点検してみてください。

情報確認日:2026年5月29日